「色」…赤で統一 まちに一体感

2007_0808

「色」…赤で統一 まちに一体感

写真:百彩


写真: シャツや傘などいろいろな赤いものを飾る参加者 2006年8月13日 「続・百彩」にて 杉本さやか氏撮影

 米国・フロリダのウォルト・ディズニー・ワールドに学会で数日滞在したことがあるが、3日目になると、もう限界!と感じた。赤・青・黄といった原色系の清潔で整然としたトーンや、使われる色の面積がどーんと大きかったりして、かなり視覚的に疲れ切ってしまったのである。アジア人であるためか、猥雑で乱雑な色のまちも好きなのである。日本の景観はごちゃごちゃでひどいとよく言われるが、かといってテーマパークのように整然とされても息苦しい気がする。

 五感体験の大切さは言われているものの、まだまだ視覚中心の認識が拡大している。まちにはありとあらゆる色が足し算的にあふれ、昔は地味な「ケ」としてのまちに色を用いることが「ハレ」であったが、今は逆に色を抑えることが「ハレ」になるという逆転現象になってしまっている。ライトアップやルミナリエ、キャンドルナイトといった夜の灯りイベントの流行も、そういったまちの過剰な色を引き算する視覚体験がほっとさせてくれるからではないだろうか。

 2年前から、歴史的なまち並みの残る中山道高宮宿(滋賀県彦根市)において、「百彩」(ひゃくさい)というコミュニティ・アートプロジェクトを仕掛けている。これは、、「井伊の赤備え」や「赤鬼」「べんがら」といった歴史にある彦根地方のシンボルカラーである「赤」をテーマ色として、街道沿いの家々にご協力いただき、家の中にある赤いものを何でもかまわないので探し出して、家の前に飾ってくださいというものである。はじめて仕掛けたときには、なかなかイメージが伝わらず、当日になって隣近所が飾る様子をみて、「ほなわしとこも飾らないと」ということで飾る輪が街道全体に広がっていったものだった。

 どのような赤いものが飾られているかを見て回るのが楽しい。そこには、通常の散策では触れることが難しい、住み手の工夫や個性が見て取れる。赤い風車や団扇を何個も作って並べたり、トマトを並べて「ご自由にお持ちください」とメモ書きが添えてあったり、赤いぬいぐるみやTシャツ、ヘルメット、着物、のれんなど、それぞれの暮らし方がにじみ出ている。酒屋は寿角樽を出し、郵便局もユニフォームや配達用バイクなどを並べていた。「これするとな、競争みたいになるんよ。もっと見て欲しいなと思うし。」「赤いもんが飾られてうわーすごいなーって。良いことしてくれはったと思って感謝しているの。」といった声をいただいた。

 こういった仕掛けを、「色彩参画」と名付けている。かつては歴史的な景観で一体化していた宿場まちで、旧街道としての一体感を、あらためて色を飾る=参加することで実感しようという試みである。色は統一しながら、飾るものは各家ごとに自由に無理なく選ばれるところがミソである。何気なしに見過ごしていた赤い自動販売機やポストも、この日だけは、まち並みに積極的に参加しているものに変身するのだ。

 色彩参画の取り組みが、中山道の他の宿場や地域にも広がれば面白いと考えている。何せ、用意するものは何もいらないのだ。ただ家の中から色でモノを探し出し、軒下に飾るだけである。各宿場ごとにテーマ色を決めて、グラデーションが完成したら、そこに「色並み」が生まれる。

 今年も8月10日から12日の3日間に高宮宿で開催される。展示コンテストやフォトコンテスト、スタンプラリーも行われる予定である。是非、赤い服を着て参加してみてください。お問い合わせ電話:五環生活事務局0749-26-1463まで。

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